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1-10-10 豚児志織 消えた女性市議 圭、校長室へ乗りこむ

モモエ探偵社代表、児島桃枝がR高校へ出向き、中西益雄と会見するとした予定の日、柴山圭は早々に議会での仕事を切り上げ、事務所に戻っていた。
彼女からの報告を待つためである。
自分が署名した紹介状を桃枝がどう使うかはわからなかったが、河徳側へ正式に宣戦布告するようなものなのだから、後ろ盾としては城に腰を据えて待機しているべきだろう。
といっても、議長派と市役所の癒着を暴くための資料整理や書類作りなど、他の仕事も山ほどあるのだから、暇を持て余すようなことはない。
世間では公共事業削減による土建業不況が日常化している中、この市においてその傾向がほとんど見られないのは、時代錯誤の箱物行政が依然として幅を利かせているからだった。おかげで市債に依存した予算編成は毎年火の車で、年々市民への皺寄せが酷くなっていく。栄えているのは競争入札制度を支配した一部の土建業者と、談合の奸計を用意して業者側から合法非合法の金銭を懐に入れている政官の一派だけである。何しろ彼らのドンと呼ぶべき中心人物が、もともと土建会社の社長上がりなのだから、旧き懐かしき利権政治の典型例なのだった。
議会内の反対勢力を次々に攻略し配下に収めていった彼らは、自派に都合のいい市条例を制定し、都合の悪い条例を改悪し、己の栄華を恒久のものにしてきたのである。
彼らにとっては『札付き』である柴山圭が当選すると、懐柔作戦は無理と即決したらしく、排除と攻撃を徹底して行ってきた。
議会における彼女の行動は執拗に封じこめられた。発言は妨害され、強制的に無期延期され、許されても他議員のみならず傍聴席に仕込まれた手下達によって激しい野次に晒され、事実上、封殺されてしまうのである。
しかしこうしたあからさまな『空中戦』に──圭が自身のブログを使ってどんどん暴露するものだから──世論がかえって彼女に同情するとみるや、狡猾な彼らは陰湿な『地上戦』へと作戦を変更しもする。
圭が中央の過激政治集団の一員であるという中傷は、最もしつこく市民レベルへ流されるデマの一つであったし、先日のようなならず者による『襲撃』も頻発するようになった。
例の迷惑電話もある。それが暗黒勢力の手によるものなのかは、内容の支離滅裂さからして疑いも残るのだが、圭の議員活動をよからぬものとする態度は彼らと同心円上にあるスタンスにはちがいない。
それでも彼らの攻勢が圭の二期目の当選を阻めなかったのは、選挙民にも改革への希求が消えていなかった証拠であるし、議会内から幾つかの不正や愚行の告発がなされたのは、圭の能力の高さの証明でもあったわけだ。
この市にも再生の灯火は残存するのである。

電話が鳴りだした。

桃枝からだろう。
気がつけば陽はとっぷりと暮れ、窓の外の古びた景観は街灯の青白い光に染まっている。
──いや、電話器本体の液晶画面を見ると、着信したのは圭の自宅の番号である。
相手は娘の志織だった。
「事務所にかけてくるなんて珍しいじゃない。どうしたの」
高校生の彼女は誰に似たのか独立心が強く、とくにこの頃は親との団欒の時間も切り詰めて、サークル活動などに没頭する青春真っ只中の毎日である。
『さっきねぇ、警察の人が来たのよ』
娘の声は動揺しているようではなかったが、かといって機嫌の良いそれでもなかった。
「警察って・・・。何かあったの」
『ほら、この間、ベランダに干してあった私と議員の下着、揃ってなくなったじゃない。あれやっぱり下着泥のせいだったらしいよ』
「志織、お母さんのこと議員なんて呼ぶのはやめなさいね。下着? ああマンションの下へ落ちた奴でしょう」
『事務所にいるママは議員先生なんだから問題ないでしょ。だから落ちたんではなくて、私が言ったように盗まれたんだって。刑事が来て、ホシのガサから発見したっていう下着を確認してくれっていうのよ』
警察用語を連発する娘を叱るべきか黙認すべきか、迷っている余裕はない。自宅に警察の人間が訪れたというのは理由の如何に関わらず議員としてアドバンテージでは有り得ないのだ。
「下着をもってきたの? どうしてその下着がうちのだとわかったのかしら」
『実物じゃなくて、実物大の写真よ。ホシがコレクションの目録を作っていたんだって。詳細なデータをよ。私もう恥ずかしくってしょうがなかったわ』
どうやら容疑者はまだ捕まっておらず、住居のみが摘発されたのらしい。この市を中心とした広範囲に犯行現場が及んでおり、盗んできた下着も三桁にのぼる数だった。目録の作成自体に変態性欲を感じる、そういう癖もあるらしかった。
お転婆の志織が恥ずかしがるのも無理はない。
目録には窃盗した日時場所はもとより、下着の所有者の名前や年齢、身体のサイズまで記録されていたという。
『で、それが本当にその持ち主のものであるのかどうか、一つひとつ特定していかなくちゃならないので、根掘り葉掘り聞かれたってわけよ』
「──っ」
家族の同伴していない未成年者に対し、そんなデリケートな事情聴取をするだろうかと、圭は瞬間、疑問に思った。
「刑事さんって男性なんでしょう」
『男もいたけど、女もいて、質問したのは女のほうね』
だとしても、拙速のそしりを免れまい。日を改めて再来すればいいだけの話ではないか。下着泥の捜査にそれほど固執する必然性はない。
『ホシの趣味ってのが特殊でね。ステータスの高い女性しか狙わないんだって。他のガイシャの下着の写真も見せてもらったんだけど、教師とか、弁護士とか、会社の社長とか、あと新聞記者っていうのもあったかな。つまり今回のホシの狙いはピチピチギャルの志織ンじゃなくて、議員先生の柴山圭さんのほうだったのよ。つまり私はとばっちりを受けただけなの。ムカツク話じゃない、何から何まで──』
議員を狙った『下着テロ』?
世の中、物騒なのか平和なのか、ちっともわからない。
『それで・・・』志織の声の調子が済まなそうな物言いに変わっている。『・・・目録にあった下着が本当に議員の下着かどうか、調べなきゃいけないって、しつこく言うもんだからさ』
「どうしたの」
『・・・タンスにあったお母さんの下着の一部を渡しちゃったのよ・・・』
それを後悔し自責にかられ、不機嫌な電話になっていたのだ。
「DNAの照合? 何だかおかしな話だわ、それも。でも志織が悪いわけじゃないからね。お母さんの初期対応がまずかったの。心配しなくていいよ。こっちで説明を求めておくわ」
志織は結局母親の仕事を応援したかったのだと思う。この事件に協力するのがその一つになると純粋に判断したのだ。面と向えば生意気なことを言うが、本心は母親と母親の仕事に畏敬の念を抱いている。憧れでもあるのだろう。その温かい気持ちを思えば無下に怒るなど論外である。
娘からの電話が長引いてしまったが、コール割込機能のついた機種なので、桃枝からの至急電がきても逃す恐れはない。
圭は紛失した下着を思いだそうとする。
それに凝る趣味はないので、所持しているほとんどが白かベージュの大人しいデザインのもの。中年の肉づきになってからは、ワンピースのボディスーツを好んでいたが、当該下着は志織のものと同じくビキニタイプであった。しかも、色柄も娘と揃いのピンク色。志織の父親である元夫が海外出張のおり、お土産として買ってきたのだ。一種の諧謔で、二人は呆れたものだが、有名なブランド品らしく、履き心地はたしかに最高なのだった。なので娘はよく身につけていたし、母親も稀に使っていた。たまたまその日、同時に洗濯したものだからベランダの軒に干し吊るしていて、被害にあったというわけである。
志織が言っていたように当初圭は盗難説ではなくて自然落下説をとっていた。
他人が侵入した形跡を見つけられなかったためだが、警察沙汰を敬遠する議員心理と政治情勢を慮るところがなかったかと言えば嘘になる。
大人の事情に娘を巻きこんでしまったのだ。
(こんなところでしっぺ返しを食らってるやんか)
自分に舌打ちするものの、許し難きは窃盗の真犯人。
薄気味悪い変態性欲者の彼の手で、もみくちゃにされたはずのランジェリー。目録のコメントを書きこみながら、娘のプロポーションと母親のそれを比較し、妄想して恍惚としていたのだろうか。クロッチの部分に鼻面を当て、胸一杯に臭いを嗅いだのだろうか。とくにパンティは娘のものよりひと回りも大きなサイズだったが、それを頭からかぶったりもしたのだろうか。
背筋に悪寒が走る感覚に、女議員は苦笑する。
年甲斐もないと思ったのだろう。
ここまで年齢を重ね、日常の多くは殺伐とした政治の世界に身を置いている。
離婚以降、男性関係など閑古鳥だ。
性的な営みといえば、生理程度である自分に降って沸いた、変態性欲の赤裸々な世界──一瞬だが目が眩みそうになったのは、フェミニストの矜持からすると失点で、反省から克服すべき課題なのだった。
『・・・だからルリコがねぇ・・・するんだよねぇ・・・』
不愉快な思いをした代償を求めるように、刑事来訪の報告を終えても、志織はサークルでの友情を母に紹介し、感想を尋ねてくる。
しかしそこへ割りこみ通知の信号が入ってきた。
今度こそ児島桃枝だろう。
志織に断りをし回線を切り替える。
『──ごらぁ不肖柴山!』
あの迷惑電話の声であった。
この忙しい時に不愉快きわまりない人間の登場である。
電話空間の異相とはいえ隣り合うように最愛の娘がそこにいる。
今や同志といっていい桃枝も連絡してくるのだ。
可愛げのない邪気に付き合っている暇はない。
「今日は多忙なの。他に相手をお探しなさいっ」
きつくそう言い渡すと柴山はそのまま切ろうとした。
『待て待てぇい、遂に愚女議員の隠蔽体質に正義の風穴を開けたり。全日本に放たれし伏兵達よりの情報を分析すれば、たとえばその目方は15貫(かん)470匁(もんめ)と弾きだせり。これ正解ですね』
「ハァっ? わけわかんないでしょ。切りますよ」
『体脂肪率28%は極悪至極。食習慣リスト、月末までに柴山圭躾委員会まで提出せよ』
「今日はまた一段とイケイケの電波力やね! いい加減にしないと訴えることになるわよ!」
『豚児柴山志織の身の丈は5.5尺に寸足らず。残念でした。パリコレは一次選考にて落第です。演劇部で良かったですね。女優の道の選択を全力で支持します』
「──」
彼の口から初めて娘の名前が叫ばれた。ショックといっていい動悸が圭の心臓を襲う。
しかも『5.5尺に寸足らず』?
慌ててメートル法に換算すると・・・165センチくらい・・・志織の身長に合致するのではあるまいか。
すると自分の体重も正確な数値を当てている可能性が高い。
柴山家のプライベートへの彼の電波侵蝕はすでに違法の領域に食いこんでいる。
「・・・とうとう全面戦争へ持ちこむ気ね」
柴山は怒りを殺して反撃する。
「これまで、とりあえず一線を守っているようだったから、それに免じてお付き合いしてやっていたのに、あなたのほうからその一線を越えるというなら、こっちも戦いますよ。子どもを攻撃する敵には母親は全力で立ち向かいますからね。そこのとこ、承知して娘の名前を出しているんやろうね!」
『逆ギレ無用! 己の軽挙妄動により世間を危機に陥れておきながら、正義の指導が身体に及ぶやヒステリーで反応し、ドスを振りまわすその所業、更生の余地まるでなし。国民の被害感情、峻烈にして癒し難く、罪深きバブリーな肉体に首縄腰縄打って、小伝馬町への収容を許可する。そのさい尻子玉の没収必須。異議申し立ては認めますよ。とくに男女のイコーリティへの狂信や管理教育への誹謗を取り下げるなら、罪一等を免じる慈悲は用意されり。エクボの可愛い豚児志織ンも嬉々としてポールダンスしだすはず。バージンロードは大切にしたいものですね!』
「・・・わかったわ。不可侵条約破棄は本心のご様子ね。それではこれよりあなたとの電話はすべて録音します。場合によってはあなたの立場を危うくする証拠となりますのでご留意ください。ではさようなら」
『アディオス!不肖柴山アディオス! 貴女の法令線より歯肉線が好きでした。おそらく妊娠線となればさらに躾けがいがある。なぜなら自慢の空気頭は何も生みださなかったが、政略的に放置された肉体の上手ぶりは──』
もはや躊躇せず圭は通話を切断した。
待機中の志織との回線を復活させる。
『忙しいの、議員?』
「まあね。ところで、あなた身長何センチになったっけ」
『へ? また唐突に。大丈夫? なんかあったの』
「いいえ。高校生の子のいる支持者の人と話す機会があってね。最近の子の平均はという話題になって」
『ふーん、167よ。春の検診の時の数字だけど。度量衡? ああ単位をかえる奴だっけ。ネット使えるよ。15貫470匁をキログラム換算に? 尺貫法でも問題になってんのかな。まあいいや。えーと・・・しめて58キログラムくらいになりますが・・・ああこれって議員の体重じゃない、ちがう?』
どの数字もぴたりと一致している。
ぬるっとした鱗をもつ蛇がゆっくりと首に巻きついてくる不快感。そして戦慄感。
自宅に一人いる志織が急に心配になってくる。
「・・・でも志織、戸締まりだけは気をつけなさいよ。電話も知っている番号のしか出ちゃ駄目。それ以外は無視しなさい。あなたの青春とお母さんの仕事とはちがう次元のものなんだから、犠牲になることはひとつもないわ」
いまいち理解しにくい母のテンポに、志織が受話器の向こうで不平顔なのは仕方がない。このうえは事務所の仕事をすぐに終わらせ、帰宅の道を急行するのが親の責任である。
電話を切った柴山は壁の時計を見上げて唸った。
児島桃枝の面会はとっくに終了している時刻である。
なぜ報告が来ないのだろう。
真面目な性格の彼女がそれを怠るはずはなかった。
長引いている可能性もある。
女所長が辣腕なら、中西益雄コーチやR高校の教員達も海千山千である。なかなか尻尾をつかませないのかもしれぬ。深追いをするなとアドバイスはしたが、しぶとい腰こそ桃枝の真骨頂だから、粘れるだけ粘る戦術へ舵を切ったのだろうか。
しかしとうとうその日は、連絡が来ないまま一日が終わってしまったのである。

桃枝への通信手段をいくら試してみても、彼女の声は聞けず、返信も一向にないものだから、焦れた圭は翌々日、モモエ探偵社に電話をかけてみた。所長が独断専行している一件がバレてしまう危険性もあって、彼女の社内での立場を考えれば控えたほうがいい行動だったが、そうも言っていられない状況と気持ちを引き締める。
結果は──
代表は病欠ですという素っ気ない回答を聞かされるのみであった。
その言葉の端々からは桃枝への同情は三分の一で、残りは抑制的な非難の色が含まれているのを読みとれる。部下の大半が男性だから、会社としての切り盛りも大変で、自らの能力で範を示しながらカリスマ的に統率力を保持していかねばならない女性経営者タイプ──強さと危うさのせめぎ合いの上に成立している地位なのだ。
それが児島所長である。
私情に流され、ダラダラと商売度外視の仕事にかまけ、あげく数日に及ぶ欠勤などと空回りの噂が社内世論となれば、せめぎ合いはすぐさまリーダー格の不安定へと傾いてしまうのだろう。
「病欠の申し出は彼女自身が電話を入れてきたのですか」
圭の問いに応対の男性は、そんなことが重要なのかと言わんばかりの無感情さでこう答えた。
『メールです。厳密に言えばルール無視ですが、ここは所長の会社ですからね』
心の内側で呻く圭。
ならばこの音信不通は消息不明?
志方有希もそうだった。
志方和美もそうだった。
音信不通から始まり、消息不明になり、最後は事実上、失踪する。
その連関が児島桃枝についても開始されようとしているのではあるまいか。
「一刻も早く所長さんの居所を確認したほうがよろしいですよ」
思わず急かしたが相手は生返事をくりかえすばかり。当然だ。彼らは疑惑の核心について何も知らされていないばかりか、いわゆる犯罪はどこにも立証されていないのだから。二人の女性が信念を180°方向転換させただけ、なのだ。一般庶民であれば『女心と秋の空』で済ませてしまうところだろう。
桃枝を探しだすのは自分しかいないと改めて実感させられる。

自宅へ訪れた警察関係者を名乗る二人組についてだが、その身分に甚だしい疑義が生じている。
圭がさっそく当該分署へ問い合わせてみたところ、たしかにその地区で下着の窃盗事件は報告されているが、その日、刑事を派遣して聞き込みを行った事実はないというのである。ただし捜査の詳細については──たとえ議員であっても──漏らすわけにはいかないので、これ以上は便宜できないときっぱりと申し渡された。むろんその通りなのだが、彼らの突き放しぶりは、捜査権の独立を権力の横やりから堅守する使命感からの発露、というより、事あるごとに綱紀粛正と情報公開をねじこんでくる恐い者知らずの田舎議員へ、これ幸いとお灸をすえるような意味がこめられているのだろう。
じゅうぶん予想されたことで、だからこそ当局への通報には慎重になりがちだった圭である。
まあ、かまわない。
孤軍奮闘は最初からわかっていた話しだ。
問題は例の二人──志織の証言から男女のペア──の素性である。
警察でないのだとしたら誰なのか。
少なくとも柴山家で二組の下着が紛失した事実を知っていたのである。
すると、有力な推理の一つとして、彼らこそが下着泥の主犯であるという仮説が浮上してくるではないか。
典型的なマッチポンプ。
なぜそんな手のこんだ真似が必要なのか。
柴山家へたやすく侵入できることを誇示するのは、無言の圧力としてかなりの重量感を持ってはいる。
留守勝ちな両親をひとり待つ女子高生は格好の標的である。しっかりしているとはいっても、まだニキビを気にするティーンにすぎない。
今回の不審者は冒頭、『警察のほうから来ました』と言ったそうだ。
だが、よくある詐欺師の手管であると、母親は娘を説教しなかった。
彼女を怖がらせるのは無意味である。
それ以上の事情聴取を控え、偽刑事だとの推理も打ち明けなかった。ただ警察の捜査は進んでいるからとだけ説明して、戸締まりへの注意を励行させ、あとは忘れるように仕向けた。
そうそう、忘れていけないのはあの電波男による迷惑電話との関連性である。あの男もまた志織の名を口にし、柴山家への関与をほのめかす態度に出た。彼が偽刑事の一味であるなら、あの日にそれまでの『習性』を軌道修正したのも理解しやすいのかもしれない。
・・・家族へのテロ・・・これまでなかった嫌がらせだった。
明らかに何かが強化されたのだ。
それはおそらく、自分の足が虎の尾を踏みつけたからに他ならないと、圭は思った。
桃枝にも話した、この市における十年前の告発騒動──あの資料を請求した時こそ一線を越えた瞬間だったのだろうか。
(だったらそこをドシドシつついてやるべきじゃない)
攻められて困るからこその過剰反撃だろう。こちらの狙いが正しいことの証明でもある。
はっきりしているのは、逃げる気は毛頭ないという不退転の決意だ。
攻撃は最大の防御。
背中を見せるとかえって危険だし、そもそもこの市の議員になったのはこのためである。
怖じ気づくことは有り得ない。
児島桃枝の事態を解決し、十年前の真相を暴くのだ。
そうすれば家族も安全になる。
この市に平和が訪れる。
それが母として議員としての責任だった。

とりあえず議員OBへの聞き取り調査を続けていくしかない。
どこかに闇へ葬られた義勇士がいるはずなのである。
諦めては駄目だ。

しかし、連絡のとれた対象者は義勇士としての遠い印象を再確認できただけであり、連絡のなかなかとれない者も、議員中の履歴をたどればたどるほど、会う意欲が失せていってしまうのをどうしようもない。
例えば、この女性議員などは、もしやと思わせるにじゅうぶんの素養を備えてはいるのだ。
一期4年だけ議員を務めていたが、それは十年ほど前である。;時期的に合致している。
会派は無所属となっている。;自分と同じ志しであるかもしれない。
文教委員会に所属していた。;実際的な目配りも似通っていることになる。
さらに注目すべきは、彼女が河徳学園系列校のPTA副会長を務めていた事実である。それも系列に吸収される以前の高校のPTAなのだ。ならば数々の黒い噂にまみれた河徳の拡張路線を間近で目撃した可能性があるだろう。議員として黙過するに忸怩たるものがあったに決まっている。
歴代議員名簿に顔写真が残っていた。
美人と呼んでいいルックス。選良なのだから聡明そうなのは驚く点ではないとしても、その上品さときたらどうだろう。女闘士や女史にはない、自然体の魅力が感じられる。志方和美にも同種の華があったと思うが、さらに眩しい輝きをもっていた。
この美女が墨塗り議事録の中の義勇士を演じていたら、さぞかし天下の耳目を集めていたことだろう。
もっとも、ネット環境など整っていなかったその当時、権力により一方的に情報は封鎖され、書類は検閲され、発言は徹頭徹尾、裁断されていったのだから、天下は彼女を知る由もなかっただろうが・・・。
いやいや、と圭は苦笑しながら首を振る。
彼女は義勇士ではない。
そうであるはずがなかった。
なぜなら彼女が無所属であったのは初当選当初の数ヶ月間だけである。それ以降はよりによって議長派の会派に合流している。
文教委員会に籍を置いていたのもその通りであるが、委員としてまともな仕事をしていない。記録に残っている発言は二つのみ。議長派の長老議員の議員在任三十周年を讃えるスピーチと、市立学校の校庭にもっと花を植えましょうという提言・・・。
調査の手をもう一歩進めてみれば、PTA副会長職にも茶番劇が用意されていた。系列化が完了した後でさえ彼女はその地位のままだった。つまり疑惑てんこ盛り状態であった河徳グループの一連の動きを、阻止するどころか完全に追認してしまっているのである。他の役員を調べてみてもネクタイの柄まで河徳に染まっているような連中ばかりなのだから、その一員ということは彼女もまたそうなのだと断定してかまうまい。
二期目は出馬もせずに呆気なく政界引退。
いったい何のために政治家として立ったのか、憶測すらできぬ泡沫の履歴だった。
しかもその後の足どりがなかなかつかめない。
結局、今回の聞き取り調査において最後まで残ったのが彼女である。
どこまでも苛々させる存在なのだ。
が、ここまできた以上、調査を完結させないと寝覚めが悪いではないか。皮肉の一言でもぶつけてやりたい気分である。
わかっている最も新しいデータによると、数年前に離婚し、転居しているのだった。
転居先はA温泉郷──。
都心からも手頃な距離の古くからある奥座敷的な街。
かつては新婚旅行のメッカであり、最近では首都圏近郊型リゾート施設として変貌を遂げている。
(温泉につかりながら第二の人生? 現役時代に何を貯めこんだのやら)
圭は会ってから言うべき皮肉を心に繰り返す。
その元議員、名前を『好本早苗』──ヨシモトと読むらしい──という。
先入観をもつのは危険とわかっているものの、こういう手合いが本当の女性の敵と思えば闘争心がむらむらと沸いてしまう。
片っ端から電話をかけまくり所在地を探すがここで足跡が途絶えてしまっている。
ちがう土地へまた引っ越したのだろうか。
ここは自殺の名所としても有り難くない風評が立っている街だが、そうした裏の評判に貢献するような行為は、さすがに考えたくないところである。
離婚したという夫には一度だけ電話が繋がったことがあった。学者なのだが大学を退官して以降、隠居生活をしていると言った。元妻の話題を振ると急に素っ気なくなり、途中から怒りだし、最後には一方的に電話を切られてしまった。取りつく島がない。その後はこちらのいかなる交渉にも無反応である。
一人娘がいたのだが、彼女の消息もまったくわからなかった。
家族を頼りにするのは諦めるしかない。
当時の『好本議員』を推していた支持者・後援者に至っては力になるどころか、かえって妨げにすらなっている。連絡のつく者の多くは現在、議長派の各議員の後援会へ散りぢりに参加するくらいに無気力化しており、不倶戴天の敵である柴山圭の取材になど応じるわけもなかった。圭の足元に唾するのが関の山である。
政治家は選挙民の鏡というが、まさに『この彼らにしてあの議員あり』なのだ。
調査は壁にぶつかって時間ばかりが経過してしまう状況となった。

児島桃枝の消息について、圭はより積極的に立ち回っていた。
こちらも好本議員と同じく『人探し』の趣だが、足取りの途絶した時間と場所が明確なので動きようはある。
ただし、噂に違わぬほど、R高校の連中は一筋縄ではいかなかった、
校長の大村は居留守ばかりを決めこみ、電話に出ようとさえしない。
ようやく出たとしてもノラリクラリとこちらの面会の要求をはぐらかす。

曰く、日にちはスケジュールを調整した上で後日連絡する。(『後日』はこちらから問い合わせるまで忘れられる)
曰く、調整した結果、幸運にも一週間後に空き時間を確保できた。(一週間待たされた挙げ句、緊急の会議が空き時間に招集された)
曰く、明日こそ大丈夫だが議会の開催日ですね残念です。えっ議会を欠席してでも来る? ではお待ちしております。(妻がインフルエンザになり中止)

忌避しているばかりでなく、からかってもいるとしか思えない。
その間、児島桃枝の欠勤はいつの間にか病欠から有給休暇に変更されていた。
もう二週間以上、出社していないことになる。
代表への風当たりが日増しに強くなっているのが部外者でもよくわかる。
こうなればもう強引に胸ぐらを掴まえにいくしかない。
学校現場への介入は地方議員といえども慎重にしなければならない学問の自由の問題だが、相手が狡猾な悪意悪質者であっては何をか言わんやではないか。

──とはいうものの、さすがに授業時間中に殴りこむわけにはいかない。
学校の夏休みは終わっており、二学期が始まっていた。
一日の終業のベルが鳴る頃、柴山圭議員はR高校を訪れることにした。
そういえば、志方有希はまだこの学校に勤務しているわけである。彼女にコンタクトが取れれば、何らかの有益な情報をもたらしてくれるかもしれない。
あるいは、R高校陸上部は校内のグラウンドで練習しているだろうか。
だったら中西益雄もコーチとしてそこにいるはずで、一気に容疑者聴取の機会を増やせる可能性もある。
ままよ、まずは狸校長の大村の顔を見つけるのが先だ。
圭は彼のプロフィールを入手し、写真も調査済みである。
生徒が下校した校舎の静寂こそ本物の静寂といえる。
音はないはずなのに、得体の知れぬ音が静寂を演出しているように聞こえてくる。
それは機械音ではなく風鈴の音よりも柔らかな自然音だ。
長い直線の廊下がサキソフォンの管とすれば、幾つもの教室は、ちょうどバイオリンの共鳴構造と一緒なのだ。空気が流れるたびに校舎全体が微弱な音で呼吸するのである。
オカルトではないがオカルトと早とちりしても責められない。
無音の静寂は物理現象でしかなくても、学校のこの静寂は人間の感受性の持ち分なのだから。
コンクリートとリノリウムに囲まれた不気味な楽器の中を、スーツ姿の圭は歩いていく。
職員室は一階の南端にあるようだった。
それを教えてくれた通りすがりの制服女子は、たぶん課外活動のために居残りしていたのだろうが、圭の顔を不思議なものでもそうするように見つめていた。いずれにしても笑顔が一つもなかったのは残念なところである。
職員室の隣が校長室──。
彼がまだ帰宅していないのは、直前に間違い電話を装って引きだした他の教師の発言からも確証があった。
扉の前で待っている心境ではない。
ためらわず、ノックした。
「──どうぞ」
落ち着いた声が聞こえてくる。
自然すぎる声の調子とタイミング・・・。
まるで来訪者を予定していたかのような印象だった。
圭は扉を開け、胸を張って入室した。
部屋にいたのは男性二人──。
正面の窓の前、大振りの木製机の向こうに、背広を着た眼鏡の大村校長がふんぞり返って座っていた。
部屋の中央には応接用のセットがあり、その右側の長椅子に、もう一人、男がかけている。
美しく日焼けした肌をもつ、長髪を金色に染めあげた青年だ。
学び舎の校長室には異質でしかない、派手な色柄のアロハシャツと七分丈の白パンツ、そして素足にサンダルという出で立ちだった。
チンピラ? 一瞬心の中で身構えたが、そこまでの威嚇性はないようにも思える。
柴山圭の登場に、青年は指に挟んでいた煙草を口にくわえようとした瞬間で、動きを停止させた。
大村校長は分厚い唇をあんぐりと開けたまま、状況を把握する努力を忘れて凝固していた。
「──突然ですが、市会議員の柴山圭です──」
とりあえず金髪青年を無視し、机の前に進み立つと、そのだだっ広い天板の中央へ名刺を差しだした。
「用件は言わなくともおわかりですよね。非公式ですが抜き打ちの視察とお考え頂いて結構です。どうしたことか、なかなかお会いできませんので、こうして足を運んでまいった次第です」
ようやく大村の上半身が動きだし、名刺を受けとると、その長方形の紙片と目の前にいる女議員の顔とを見比べている。まだショック状態から抜けきらないようだった。
「まあ、先生、こちらへお掛けください・・・」
背後から声。
立ちあがった金髪青年が自分の対面のソファを勧めている。
「・・・ああ、そうそう・・・」大村も我に返り、椅子の肘掛けに両手をついて腰を浮かせかかる。「・・・そうですよ、とにかくお座りください・・・」
浮かせかかった身体はすぐに座席へ落ちた。
圭はそれに従い、ソファに腰を下ろした。
金髪青年も彼女の正面にまた座る。
青年だと思ったが、こうして間近で見ると、二十代ではないような気がする。なぜかこちらに向けている爽やかな白い歯の笑顔に屈託はないが、目尻の皺は深かった。
圭は校長へ振り向き、金髪男を横目で示しながら言った。
「内容も内容ですので、できればプライバシーにご配慮を──」
所払いを促したつもりだが、大村は今度は挙動不審にキョロキョロと辺りを見回しているばかり。
「そうだ、キムラ君、柴山先生にお茶を入れて差し上げて」
キムラと呼ばれた男を紹介もせずに用を言いつける。
キムラは笑顔をそのままにサンダル履きの引き締まった身体でさっと立ちあがった。
「校長、腰痛の気が戻っちゃいましてね。アクションが面倒なんですよ」
囁くように言い、部屋の隅にあった給湯セットを慣れたふうに扱っていく。
やはり暴力団員とはちがうようだ。家事の仕草がどこか所帯染みている。
「どうぞおかまいなく。頂きませんので」
視察中に相手からの接待を受けるわけがない。
「まあまあ、そうおっしゃらずに。粗茶ですので」
キムラは圭の前のテーブルにティーカップを置いた。ハーブ系の豊かな香りが部屋に漂う。
お茶ですら拒否するのは彼女なりの防衛策ということもある。議員相手にまさかと思うが、一服盛られては大事だろう。あのしぶとい女探偵は多分ここで消えているのだから。
所払いどころか、再び圭の前の席に腰を下ろしてしまい、悠然と自分で立てた茶をすすり上げるキムラ。
彼がスイッチを入れたのか、天井付近にあるスピーカーからクラシックの調べが流れだした。校内放送のBGMかもしれなかった。
「校長先生──」咳払いしながら圭が言った。「──ところでこちら様は学校の関係者でいらっしゃいますか」
「・・・えっ、誰?」
大村の言葉は、どこかで彷徨っていた心が圭の声により急きょ帰還したような色合いであった。
「こちら様ですよ」
キムラを示す女議員に校長は何度も頷きだした。
「──そうそう関係者ですよもちろん。関係者も関係者、我が校の女性教諭のフィアンセ、キムラ・タケジロウ君ですな」
紹介された金髪男はにこやかに一礼する。
「・・・フィアンセって・・・」
「ほら、議員もご存知でしょ、志方和美さんのご息女の志方有希先生。彼女と将来を約束された男性ですよ」
圭はまじまじと金髪男へ視線を集めた。
するとこの男が有希を陥れた結婚詐欺師のキムタケ!
なるほど。
和美や桃枝からちらほらと聞いていた風体人相と完全に一致する。
今回の失踪ドミノの発端となった人物だ。
(やっぱりチンピラで良かったわけね)
他者に対する最低の評価を、額の皺辺りに滲ませながら圭は彼の笑みを無視し、大村に言い立てた。
「今回の件にもご関係がおありというのだったら、こちらもそのように質問の対象とさせてもらいますよ。よろしいのですね」
「今回の件というと、例の興信所の所長さんの?」
「もちろんそうですわ」
「だったらキムラ君にも関係大有りじゃないか、なぁ──」
大村はキムラに言った。
「ハハハ、所長って、フィメール・ディテクティブでしょ、まあリトルガールと呼んだほうが当ってるけど。だったら大いに知っておりますよ。舌鋒鋭い方で僕みたいな口下手な男はたじたじでしたけどねぇ。それがどうしたんですか」
「どうも行方知れずということらしいんだ。その最後の目撃情報がこの学校のこの部屋だと、柴山議員はおっしゃるわけですよ。行方知れずの原因が我が校にあると、そういうご意見をお持ちになっている」
「調査中であって誰が原因などとは現段階では何も申しておりませんが」
校長の言葉を訂正する圭。
キムラは楽しげに砂糖をティーカップに追加している。
「愛しのリトルガールがまたなんで、ここに?」
「その所長さんは、議員のお友達である志方和美さん──君のお義母さんだよ。その和美さんについて画期的な見解をお持ちのようで、それを調査しに我が校へ来たのさ。議員の紹介状も携えてね。なかなかの迫力だったよ。アハハハ──」
「画期的な見解って、何のことかな」
「なんでも娘の有希先生が学校で奴隷のように扱われていて、それを助けようとしていた和美先生もミイラ取りのように奴隷になって、いったいどうしてくれるんだみたいな、わりとチンプンカンプンな話しだったが」
「へぇ、そいつはたしかに画期的だ。有希と和美ママが奴隷ですか」
まるで家族のように志方母娘を呼ぶキムラは腹を抱えて嗤いころげる。
大村校長も肩を上下させ、椅子の背へ仰け反るように洪笑を噴きだした。
クラシック音楽を覆いつくす二人の笑い声は、女議員を嘲っているようにしか聴こえない。
しかし大村の声がぱったりと止まった。
後頭部を椅子に押しつけ、口を丸く開けたまま、再び凝固──。
「校長っ──」キムラが咳きこみながら続ける。「あんまり笑うから腰椎がまたザックリいっちゃったんじゃないの」
「・・・ううーん・・・いっちゃったかも・・・」
椅子の中で腰に手をあてがい、恐る恐る捻ってみる大村。喉をひきつらせる呻きが丸くした鼻孔から漏れてくる。
「猿芝居はもうやめてもらわないとねぇ、校長先生──」圭は鹿爪顔である。「──往生際が悪いというか、また逃げの一手ですか。どこの政治家からお習いになった時間稼ぎ?」
圭の痛烈な皮肉にも大村の苦痛とも恍惚とも言える表情は変化せず、代わりに、キムラが立って、校長の机になぜか用意されていたお絞りを広げると彼へ手渡した。
「校長、脂汗脂汗──すっきり拭ってくださいよ」
「・・・キムラ君・・・私にももう一杯、ハーブティーを・・・」
そりゃ喉も乾きますわとキムラは振り返る。視線の先の圭と給湯セットを交互に見た。
舌打ちする圭。
「私が何であなた達のお茶汲みをしなきゃならないんですかね」
「いいじゃないですか。ちょっとくらいボランティアしたって罰は当りませんよ。和美ママなんか、今じゃ心を入れ替えて率先して地域のために貢献しておりますよ。心ばかりでなく身も清められるようだと──顔つきも何だか前より柔和になった感じだよなぁ」
圭はもういちど舌打ちすると立ちあがり、ハーブティーをためたポットとカップを操作していく。
馬鹿げた話しだが、こうして隙を見せることにより、彼らの情報を探りだせるかもしれない。
「和美さんはお元気のようで何よりですけど・・・」
トレイにのせて校長の席まで運ぼうとしたら、すぐにキムラが受けとった。
「和美ママ? ええそりゃもう元気で元気で、年甲斐もなくギンギンに張り切っちゃってますよ。有希より弾けちゃってるくらいで。ハイ校長、お茶。軽い脱水症状じゃないの。気をつけてくださいよまったく──」
「そんなことを言ったってキムラ君、君から紹介された腰骨体操ね、アレ効き過ぎだよ君、どうかすると心臓、止まっちまうところだったぞ」
何とか平静を取り戻した大村がずり落ちた眼鏡を直しつつ不満を言う。
「何だってやりすぎたら駄目だけど校長。でも一度はMAXを経験しておかないと。そこから自分の適正ポイントを見極めていくというトップダウンがウチのスタイルですから」
「君んとこはスパルタだからなぁ・・・」
カップに唇を密着させ、ズルズルと啜っていく大村校長。眼鏡のレンズが湯気で曇った。
「もういい加減、話を本題に戻してよろしいでしょうか」
そう口調を改める圭を、二人は初めて気づいたように凝視する。明らかに、その四つの目はまず彼女の容貌を眺め、次に白ブラウスの胸を値踏みし、下ってスラックスの腰つきを堪能した。
「・・・あの日のことをお聞きしたいのです」
圭は全身のプロポーションを隠すようにソファに座り直した。


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