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正義派の妻へのレビュー

 

正義派の妻の投票理由

・上川夏代は理想のヒロインです! (2017/03/19(日) 21:32/モノスタトス)

上川夏代:正義派の妻 の投票理由

・やっぱり「正義派の妻」ですね! (2017/03/19(日) 21:33/モノスタとス)

・もしかしたら『明日の娘たち』に登場してくれるかも…… (2015/08/02(日) 19:57/つねお)

・ヒロインの鑑。政治家、教師などエリート、インテリ層でない専業主婦というのがより良妻賢母感を出している (2015/08/13(木) 21:37/サナトリウム)


何度読んだことか。 妻の母の鏡、夏代。幸せな女に立ち込める暗雲……そして地獄。ゾクゾクします (2013/12/27(金) 12:38/ラル)

上川夏代 > 理想的な妻であり、母であり、女。巨乳は勿論のこと尻が素敵 (2013/12/30(月) 21:29/ラル)


  山田花子  2002/07/27 (土) 21:16

◎正義派の妻

個人的には一番ハマリました。

>目標データ・・・ピアス 無

余計な項目が彼女の今後を予告しているようです。

>せめて一日が終わるまでこの幸福感を途切れさせたくはない。
>たとえ明日、どんなことが待ち受けていようとも……。

このラストも素敵・・・明日を期待させる最高の幕切れです。
介護のことも丹念に書かれている「勉強」ぶりにも感動しました。


  サイケおやじ  2002/08/03 (土) 18:58

「正義派の妻」は、以前の予告篇の時から楽しみにしておりました。第一回目は基本設定的な展開で、これが商業誌ならばちょっと許されない展開でしょうが、じわじわと忍び寄る姦計と魔手に次回への期待が高まります。これは大長篇となるのでしょうか、こちらもじっくりと腰を据え、覚悟を決めて拝読させていただきます。


  山田花子  2002/08/10 (土) 01:04

 ジワジワと締め付けられるような不安感・・・伏線でいっぱいの素敵な一章でした。ボランティアをやめたことでヒロインは一応のけりがついたと思っているかもしれませんが・・・

>これは階段の一段目でしかないのよ。どんな方法を企んでいるか──、彼らにはね、日本の秘密諜報機関と言われる思想部がついているのだから。卑怯な策謀なら、思想部の右に出るものはないのよ

 まさに自らの運命を物語るその言葉・・・果たして入学式は?・・・父が出席できないだけではなく、母さえ欠席を余儀なくされる事態がやってきたりして・・・・ドキドキ。


  サイケおやし゜  2002/08/10 (土) 17:10

「正義派の妻」はジリジリとした展開に読んでいるこちらまでヒリヒリとするようなサスペンスがとても好みです。そして時折挟み込まれる監視側の会話・ログが効いていますね。


  つねお  2002/08/11 (日) 03:53

「正義派の妻」においては、あらゆる虚飾を脱ぎすてた達巳の慟哭に、胸を締めつけられるような悲しみにホロリとさせられてしまいました。こうしたすばらしい作品をたのしむことができることのよろこびをあらためて噛みしめております。


  山田花子  2002/08/24 (土) 02:10

○舞う桜

 始めに読んだときと、読み終わってもう一度この題を見たときのイメージのなんと違うことか!
これから上り坂の明日香ちゃんの一生と、まっさかさまに落ちようとする夏代の人生の交差する日・・・なんと残酷なことが・・・。

>ひと掴みの花吹雪が舞うのだった。

 あまりにもむごい、あまりにも美しいシーンです。

強姦されたショックもさめやらないうちに逮捕・・・しかもその容疑が・・・・これで序盤というのだから、本当のクライマックスはどうなるのか・・・眼が離せない、本当に一週間が待ち遠しい傑作です。


  山田花子  02/08/26 (月) 20:45

○出羽健さま

 いつも力作ありがとうございます。山田です。
 掲示板にも書きましたので2番煎じでお恥ずかしいのですが・・・
 力作に敬意を表して感想の追加を・・

 第三章 舞う桜

>「ママ、綺麗」
>久々の化粧、それもずいぶん念入りなので・・・
>ママのいつもの匂いよりももっと、胸が詰まるような匂いである。
>テレビに出てくる女優さんのようになったママ・・・・

 これが結局「民間協力者」を喜ばせるだけだったかと思うと、ヒロインの悲惨さが身にしみます。

>突然、夏代は肩を叩かれた。振り向くと、若い男性がお辞儀をしている。

普通、知らない女性の肩に直接タッチする男性はいません。このあたりでヒロインは何かおかしいと気がつくべきでしたが・・・
 ここからあとの疾走するような描写は、出羽健さまならでは・・・

>山崎はさっとドアを締め、聞き耳をたてる。どこか官能的な格闘の物音が漏れてくる。
ぶつかりあう骨と骨、くぐもった呻き、荒い鼻息……そして、女の肌をしばきあげる、鋭い殴打が鳴り響く。格闘の物音はそれを境に弱まっていき、やがて変質者の心をとろかすような、屈服を覚悟した女の、いやっ、という声が聴こえてきた。
 「ほら、山崎、受け取れ──」

 このあたりの、あえて「音」だけを描写したセンスには脱帽です。

>フラッシュがその凄惨な瞬間をも逃さずに何度も焚かれた。それは夏代の、表情を歪め、口を大きくあけて、声にならない悲鳴をあげ、全身を硬直させている姿を明滅させた。日頃の、ノーマルで明るく、ボランティアによく従事し、幸せな家庭の母として妻として活躍する美しい四大卒の女性ではなく、場末のアダルトビデオ店の、誰も見向きもしない埃まみれの棚にある、人妻レイプビデオの箱に描かれた、えげつないシーンの写真の、醜い女優の姿に見えたりするのだった。

 ヒロインの今後の運命を暗示しているそうです。

>そめいよしの花びらが空中へ散乱し、ゆっくりと夏代の裸体へ降り掛かっていく。背に尻に太腿に、そして横顔に、凄惨な凌辱の痕跡を隠すように──いや、かえって暴きだすように──それは素肌へ貼り付いた。
 「へへ、風情があるね」
 「拾い集めたのかよ?」
 「美学だよ、美学」
 遠いかなたで会話が交わされ、フラッシュが焚かれるのを、夏代は虚ろな心で聞いているのだった。

 一番好きなシーンですが、裏ビデオの導入やラストシーンには最高かも・・・・

>「また、どこかでお会いいたしましょう! その頃までは私もきっと成長しておりますから。お約束しますよ。ハハハハ」
 斉藤将志の笑い声はどこまでも夏代たちを追いかけてくるようだった。

残酷な通告です。

>浴室の排水孔に数枚の桜の花弁が流れこむのを目撃したりして、いつまでも凌辱の感触は消滅しなかった。
 気分が悪くなってトイレへ駆けこみ、嘔吐している際にも、便器の形を見ると、身体中が震えるのだった。

 このあたりもリアルですね。

>内務庁・利敵思想研究対策部からまいりました

 凄いネーミングですね。
 それにしてもようやく精神力をふるい起して、残酷な運命にたちむかおうとするヒロインを狙う一撃・・・
 放心状態になるのも無理からぬことです。

>「娘が……」辛うじて夏代は言葉をつないだ。
>「娘が一人になってしまいます。このまま置いていくわけにはいきません」

母親ならもう少し抵抗するだろうし、小学一年生なら物音や気配で反応するのでは、という気もしますが、ここは修羅場を嫌う、出羽健さまの優しさの現われでしょうか?

 いままでのゆっくりとした盛り上がりから急にピークがきてめまいがしましたが、だいぶショックから回復してきました。今後の展開を楽しみにしております。


  山田花子   02/09/10 (火)18:35

○出羽健さま

 いつも愉しく拝見させていただいております。例によって「正義派」感想を・・・・
 特別収監棟を描写するのに新人の眼を通して行い、説明的描写を自然にとけこませたテクニックはさすが・・・・

>Dは室長の力強い言葉と姿に感動し、人生をかけて打ちこむほどの値打ちを、改めて思想部に見いだした心境になって収監棟を後にするのだった。

 頑張りや、と声をかけたくなってしまいます。

>横断歩道に紺色のスーツを着た若い女性が幼児の手を引いて歩く姿があった。幼児は一生懸命歩き、一生懸命、停車中の自動車に手を上げている。
(……ああ、明日香は今頃どうしているのだろう……)
 夏代が母親としての苦悩に胸を熱くさせた時、部屋の扉が開き、見知らぬ男性部員三人と、制服姿の女性部員一人が入ってきた。

窓の外の光景としてわが子を心配する母の気持ちを描いたあとで、取調べ開始・・効果的な展開です。
 
>女性部員はニヤニヤと笑ったが、正面の男性部員は三人とも能面の表情を崩さない。

 全く個人的な感想ですが、女性部員こそ能面の表情をくずさないで欲しかったのですが・・・

>「お待たせしました。思想部部長のKです」

 このあとの2人の会話はなかなか読みごたえがあります。さりげなく今後おこる事件の予告も感じられます。

>真実という言葉の意味をご存じないのですか? それは誰かの手で捏造されるものじゃないのです。真摯な人間の行為の後にだけ、ついてくるものなのです

 これは危ない発言ですね。あとで同じ言葉を言い返されたりして・・・
なんといってもさりげなく挑発して夏代の感情を刺激して感情の動揺を誘ったあとで、証拠を見せる手口が巧妙です。しかし、すぐに立ち直って冷静に反応する夏代もお見事。

>こちらが繰り出すジャブにぐらつきはするものの、ダウンはせずにファイティング・ポーズを取り続けている。見上げた根性だ。
>「では、この告発の内容は真っ赤な嘘であるとおっしゃるんですね?」
 夏代は深呼吸をして言った。
 「その件については複雑な経緯があるので、弁護士と相談の上、お答えしていきたいと思います」

 ああ、ダメだ。なぜ全面否定をしてしまわないのでしょう?夏代が達巳に対して配慮をすることは敵はとっくにお見通しでその通りの反応をしてしまうとは・・・・

>「そうなんですよ、奥さん。正式な裁判なんかになったら、こういう証拠の品を白日の元に晒さなければならなくなるんです。不愉快でしょう? 

 まさか小学生の娘にこれをみせて、母親を説得しろ、なんてことはないでしょうが・・・・
ところで、昨日の小学校での事件の写真はどうなるのでしょうか?
 
 犯人たちが偶然つかまり、その所持品の中に例の写真がある。彼らを罪に落とすには格好の証拠品だが、そのためには夏代が告発しなければならない。裁判官の妻として、当然の義務であるし、夫も法律家としてはそれを勧めざるを得ないがそれは夏代の名誉を貶めることになる・・・・
自分はいつまでも妻をささえていくが、娘がどういわれるか・・・・
 正義派の理念に縛られて、世間的には滅びる道をみずから歩ませる・・・なんていう展開も予想されるのですが・・・深読みしすぎですね。
 
>ただ、地下特別収監棟へ引き渡す前に、手付かずの、活きのいいままの、上川夏代を体感しておきたかったまでである。今度この女に会うときは、また違った刺激を味わえるにちがいない。

 なるほど、嵐の前の静けさ・・・今後の疾風怒濤の展開を予想させる静かな、しかし説得力あふれる章でした。


  サイケおやじ  2002/09/13 (金) 06:23

さて、あいかわらず強烈な作品の数々、特に大好きな「正義派の妻」桜の美学に続いての新作では「気合いが入っている証拠だよ。剥き出しの人間同士のぶつかりあいなのだ。トリートメントってのはな。そういう哲学を持っているんだ」の部分に出羽健様ご自身の心意気を感じました。文章、物語展開の粘っこさもいつにも増して迫力がありグッときました。続きがますます楽しみです。


  サイケおやじ  2002/09/21 (土) 11:32

楽しみだった「正義派の妻」、拝読させていただきました。
逮捕までの無機質な取り調べ、さらにその後のドクターとのやりとりと屈辱の検査……、う〜ん、あまりのリアルさに息が止まる思いでした。
これはもうサスペンスホラー的な領域に入っているのでは……。
この手の物語にこういう味は避けて通れない部分であるにもかかわらず、ここまで強烈な刺激にもっていくとは、流石だと感動致しました。したがってエロい部分、例えば乳首についての部分とかのさりげない描写までが次につながる伏線になっているのでしょうねぇ、早く続きが読みたくてたまりません。よろしくお願い致します。


  山田花子  02/09/22(日) 14:10

「正義派の妻」ますます好調で目が離せません。
サイケおやじさまの書き込みの通りです。セクハラ疑惑で逮捕された容疑者が、実はレイプの被害者・・・交錯する設定が大変すばらしいと思います。

>「腟内に射精したんだな?」その言葉を聞いた瞬間・・・・

 このあたりの表現は本当に的確でクール、ぞくぞくしますね。

>現実と向き合わなければ克服など有り得んのだよ。隠しても何も解決しない。

 このあたりの論理の一方的なところもまた魅力的
夏代にやや同情的ながら「職業上」厳しくあたらなければならない、という設定の看護婦さんの描写もまた素敵です。

>夏代の青白い顔にはまだそうした希望が残っている。

この突き放し方が次回の展開を予想させて素晴らしい。
次回も期待しております

  サイケおやじ  2002/10/05 (土) 21:01

「正義派の妻」読み終えて思わず深いため息となりました。
この息がつまりそうなサスペンス! 会話中心でここまでいってしまうとは! 出羽健様ご自身の解説によれば、まだまだ本格的なものはこれからとか……。楽しみな反面、こちらの心もヒリヒリとしてまいります。あぁ、M的境地に至りそうです。


  山田花子  02/10/06(日) 18:56

第六章 苛烈な夜 堪能させていただきました。

このままこの台詞劇が永久に続いてもいい・・と思ったくらいです

>自分を徹底して『女体』として管理しようというのなら、こちらは人間としての精神の気高さで抗戦するしかないのかもしれない。

 でも、いっそのこと女体になりきってしまった方が楽なのに・・・・
 そうでないとついに精神が崩壊するはめに・・

>「──奥さん、あなたもひどい女だね」
>「言っていることがデタラメじゃないか」
>「デタラメ? どこがです?」
>「お前の言ってる話、すべてだよ!」
>「おいおい、それじゃ、オシメは赤ん坊じゃなくて母親の股座につけないと駄目じゃないか」
>「まったく、人間としての最低限の感情が欠如してるんだなあ。これでは取り付くしまがない」
(中略)
>夫に冷たくされたので、お前の心に空洞ができちまったんだよ。寂しかったのさ。それでいつしか他の男性に媚を売るように肉体がシナを作ったんだな。おい、これは強姦じゃねえぞ。和姦かもしれねえ!」

 一つ一つが身にしみる台詞です。セカンドレイプどころではないですね。
そして、夏代が完全に逆上したとわかると、さっさと引き上げる・・・見事な進退です。もともと寝せないことが目的ですから、夏代はまんまとはめられたということなのですね。
うん、翌日の描写がまた楽しみです。
個人的には今の路線で十分刺激的です。ぜひ責めは精神的なものを中心に・・・・


  山田花子   02/10/19 (土)08:58

第七章 友さえも 堪能いたしました。例によって感想をーーー
だんだん冴えてきますね・・・女性心理の解剖
個人的にはもっともっと、という感じです。

>トレイには冷や飯が盛られたプラスチックの器が一つとコップ一杯の水、そして錠剤が二粒、乗っているだけ

 いかにも、という描写です。刑務所では今でも麦7白米3らしいので、ちょっと豪華かな?
 (日本ではほとんど輸入なのでかえって高くつくそうですが・・屈辱的な意味もあるようです)

>「当然必要だ。これだけ強い心臓の持ち主ならどんな尋問にも耐えられると、ドクターとして太鼓判が押せるじゃないか」

 なるほど、そういう目的なのですね。
 
>犯された身体を守るためとはいえ、その部分の診断は、本来信頼できる医者にしか依頼しない種類のものだろう。

 奥ゆかしい描き方・・・

>「少し辛いが大人しくしていれば数分で終わるからな。そうだ、景気づけに認識でも言いなさい。今日はまだだったじゃないか。元気よくだぞ」

 景気ずけに・・というところが凄いし、あのすさまじい「認識」を言わせるとは・・・
 
>「何人に輪姦されたんだっけ?」
>「年齢構成はどうなの? 犯人グループの?」
>看護婦もセカンド・レイプ──いやサード・レイプか──の共同歩調をとり、夏代のギザギザに傷ついた精神を鷲掴みだ。

 同性に翻弄される気持ちはいかばかりでありましょうか

>「レイプであるかどうか不明である以上、医師としての常識、人間としての良識、さらに強姦以外の中絶に反対の立場をとる思想部の一員としての信条に基づき、君への避妊処置は一定期間、留保することにする」

 今回のお話の中で最高の台詞でした。

>「裁判所に提出しても証拠として採用してくれますよ。決定的と言ってもいいんじゃないか。ま、もっとも、あなたの旦那がこの事件の担当になれば拒否するかもしれないけど。事件自体、闇に葬るかな。彼の専売特許だものね。恣意的な判決を下すのはさ」
>「どうしてです? 清純な乙女のお花畑での初体験。ちっとも下劣ではないと思いますが。それともそういう印象をお持ちになられたのですか? ノーマルなセックスに?」

このあたりの突拍子もない論理はとても刺激的!

>「そうですかね。でも、奥さん、これだけは肝に命じておいてくださいよ。白崎がその運動と奥さんの関与を認める証言を今後するようなことにでもなれば、事態は一変する。強制猥褻罪なんてチンケな容疑は吹き飛んで、国家反逆罪があなたの罪状になるんだ。そうなれば、今のように黙秘権だ拷問反対だのなんだのと我を張ってはいられなくなるんだからな」
>「──」
>思いもよらない展開に夏代は冷水を浴びせられた気分である。たしかに国家反逆罪といえば、最高刑は死刑の重罪。容疑の段階でも社会に対するインパクトが違う。容疑者のみならずその家族もまた社会の指弾を受ける運命となる。
「ま、白崎が口割らないことを祈るのだね」

 冷徹な戦略・・・
結局夏代の運命は決まっているのですね。ただ、アクセサリーとして「強制猥褻罪」や「姦通罪」を加えて、夫もろとも社会から葬り去ろうという悪辣な計画・・・でしょうか

>「どうしました、奥さん? 顔色が悪いようだが」
>──Bには夏代の胸中が手に取るようにわかるのだ。思想部の行動班が半年も二十四時間態勢でマークして採取した上川夫婦の寝室の会話の記録がこういう形で役に立ってくる。ジワジワと一寸刻みで、この女の信頼しているものを破壊していく。肉体だけでなく価値観をも裸にされれば、後はこちらの思うままに操れる。ちょうど現在の白崎栄子のように──。

 勉強になりますね。肉体的な裸ではなく、精神的な裸がつらいのですね。

>夏代は自分の内部で、Bの推理を明確に否定する気持ちが優勢であることを確認できて安心した。貴文への信頼は微塵も揺らいでいない。女の第六感は貴文の浮気を察知していなかった。それは確信できる。

 こういうリアルな描写があるところが嬉しいです。
外堀が埋まって少しずつ追い詰められて行く夏代・・・
次回が本当に楽しみです。


  サイケおやじ  2002/10/22 (火) 06:59

「正義派の妻」今回もこちらの精神までキリキリとまいってしまいそうな展開に圧倒されました。こういう部分がジワジワと積み重なって、完結した後に再読したとき、こちらがどのような地獄に落とされるのか、それが楽しみという被虐の期待もしております。


  山田花子   02/11/03(日) 08:34

 第八章 ちんぶの戒

 抑制されていた「暴力」の一端を覗かせた素敵な章でした。

>「奥さん、いい表情してるよ。女らしくて可愛いよ。肩の凝りがほぐれたんで、顔からトゲが薄れた感じだね」

 きっと、後で「拷問だ」と訴えても「揉み療治だ」と主張するのでしょうね。
 だってちゃんと

>『肩を揉んでいただいて有難うございました』

 と言ったのですから。もちろんこれ自身は「屈辱に思うほどのものではない」のですが、拷問に屈服したことには変わりなく、「わ、わたしがやりました」という台詞をいうための予行演習ということなのですね。

>だけどこの程度、小学校一年生のあなたの娘だって言えるんだから・・・

 さりげなく娘の話題をふって心の動揺をさそう手口がさすが・・・

>十数分後、セル部へ戻された夏代は昨夜と同様に小部屋で全裸になり、直立不動の姿勢で立たされていた。

 疲れきってかえってきたヒロインにさらに追い討ちをかけるのが出羽健ワールドのお約束・・・
 
 そして執拗な言葉責めと、卑猥な肉体への接触・・・ヒロインが暴発するのを待っていたにちがいありません。
 そして「ちんぶ衣」の登場・・名前の刺繍には恐れ入りました。

>二十年間にこの囚人衣を肌に当てた女達……。それほど長い年月、この非人間的な処遇が改善されなかったという暗黒的歴史……。そして自分の名もこの裁縫の列の中に並んでしまうのではないかとの恐怖……。薄っぺらな生地から放たれてくる濃厚な異臭が夏代を金縛りにするのである。

 今回はこの描写に感心しました。
 
>鎮撫着なるものがあるからこそ、ロープと肌の合間に僅かな隙間が確保され、致命的な血流の遮断を食い止めているのだと思う。

 それは、苦痛を長引かせるためだと思うのですが・・・

>「手間を取らせやがって。今夜は夕食抜きだぞ。一晩中、縄つきのままで転がってろ」

 せめて水分の補給でもしないと・・・いやいやこの格好では用をたすこともできないので、かえって「思いやり」でしょうか?
 それに「一晩」というのも思いやりでしょうか?噂に聞く「鎮静衣」+「保護房」はこれが継続するそうですから・・
 いえいえ、とりあえず恐怖を味あわせておいて、それをネタに自白においこむつもりか・・・
 次回の「粥」というのも気になります。空腹な女囚にどんな「食事」があてがわれるのか・・・どきどきしながら次回作をお待ちしています。
 そろそろ「外界」の動きが気になりますが・・・これもヒロインといっしょに「出羽健ワールド」に閉じ込められているせいでしょうか・・・それにしてもさすがのお手並み・・・
暴力を「ヒロインに恐怖と絶望感を与える」レベルで止める抑制力にはいつも感心させられます



  山田花子  02/11/17(日) 01:16

第九章 粥

>鎮撫で一晩、放置されていた女の反応は一様なのだ。案の定、この女もまた逆らわず、頷いた。
>少しでもこの戒めが弛められるなら、もはや女の羞恥など小さな問題にすぎない。

なるほど、これがポイントなのですね。
 
>「処置とは尿道口のマッサージと、ゴム管の挿入による強制排尿だ。
 ぜひ後者も出羽健さまの筆さばきを見たいところですが・・・
> 「娘さんの様子だけどね──」
> そう短く言っただけで、夏代は電気に触れたような表情になってBを見るのだった。

  さもありなん、という描写ですね。
 
>万全の手を思想部は打っていた。なにしろ半年に渡る盗聴により、夏代がどのように娘と接して愛情を注いでいたか、すべてデータとして蓄積されているのだ。それをプロの児童心理カウンセラーが分析し、抽出したノウハウを、この女は身につけているのである。好きな食べ物、好きな歌、好きな遊び、眠らせ方はどうすればいいかまで、完璧に熟知している。心に忍びこむのは簡単である。家庭の破壊ほど、思想部に刃向かった上川一家への復讐の仕上げとして相応しいものはあるまい。

 まあこれは惨い計画だこと・・・
 
>どうやって食べればいいというのか。まさか犬喰いしろとでも?

 てっきりそちらの方面を書かれるのかと思ったら・・上には上があるものですね。

>透明なアクリル素材で出来た漏斗が彼女の口に差しこまれようとする。どうするつもりであるのか、推測した夏代は口を厳しく結んで最後の抵抗にでた。今朝、ドクターのところでも使われたあの鼻栓がその必死の抵抗を粉砕する。まるで肉のヤカンだ。生きているのが嫌になるほどの処遇なのだ。

 素晴らしい。でも今回一番ぐっときたのはここ・・・

>夏代は苦しみを少しでも和らげようと明日香のことを思い描いた。きっと今は給食の時間だろう。小さな椅子と机にちょこんと座り、配膳された食器の中身に目を輝かせて、友達と一緒にいただきまーすと声を揃え、一心不乱に箸を動かしているのじゃないかしら──。また溢れてきた涙に濡れ、ふきだした洟汁に汚れ、口の端から逆流した胃液と唾液と半消化の粥に覆われるという、凄惨な状態に陥れられても正気を保っていられるのは、明日香のあどけない笑顔の記憶があるからなのだ。呼吸困難と拘束による血の巡りの悪さとによって、再び薄れゆく意識の中で、夏代は思った。──絶対に私は彼女の元に生還しよう、と。

 夏代にとっては未来の自分を見る思いでしょうか?

>「おや、奇遇にも二人ともレイプの被害にあっていたわけだ」
>「まあ、どっちも男好きするタイプだからなあ。不思議とも言えないのじゃないかな」

 嘘つけ、同じ「民間人」の協力を仰いだくせに・・・ということでしょうか・・
 
>「谷内はメンスの匂いしかしないけどなあ」

 夏代の時期メンスはくるのか、こないのか・・
 新しいキャラ登場でますます期待が高まります・・・

 

  Dr.F  2002/12/07 (土) 03:12

今回の正義派の妻は、実に感動的でした。
実に詳細な描写をされており、是非一度は実際にチャレンジしてみたいと思いました。恥垢フェチにはたまらない今回の作品で、昔の那智祐二という作家の作品を思い出しました。彼は70年代にSMマガジン等でよく目にした作家で、羞恥責めの手段として、いい年をした女のクリ滓をあざ笑うという手法をしばしば登場させていました。処女のも興奮しますが、「女」のクリ滓というのは、いっそうそそられてしまいます。
是非今後とも「あまり恵まれない恥垢フェチ」のために、すばらしい作品をどんどん供給してください。



  山田花子  02/12/09(月) 00:08

第十章 感想

>季節外れの強い高気圧が張り出して・・・・
 いいですね、小説ならこういう出だし

>肉体的な拷問は当然、苦しいものであるけれども、なにより夏代にとって深刻だったのは・・・

 ジワジワと進むところが最高です。

>貴文が私を裏切るなんてことにはなりはしない。二人の愛情は薄れてはいないのだ。

 裏切るなら簡単ですよね。お互いの身を案じる余り、『裏切るふりをする』必要も出てくるのでは・・・

>「トイレでやることは決まってるじゃねえか」と、彼は言った。

 突き刺さる台詞・・・

>「それともレイプなんか、そもそも無かった事なのか?」
>「あったわよっ」と夏代は吐き捨てた。「いいわ。見せてあげるから、ちゃんと目を開いていなさいっ」

 ああ、いけない、挑発にのっては・・・

>「夏代ちゃんの穴掃除かい」

 この言葉も刺さりますね、ぐさっと。
 
>紅潮状態のクリトリスへの直撃の消毒は電気責めを食らったに等しいショックを彼女の臓物に与えた。

 この状態で更に精神的な責めが・・・

>「奥さん──」よく聞けと顔を両手で挟んで、まだ大混乱の動きをしているその目を覗きこむ。
>「助けは来ない。来ないんだぞ。お前の亭主はお前に愛想を尽かして、他の女とイチャイチャしてるそうだ。

 ここで秘蔵の写真をみせられたり、合成の音声テープ(夫婦の睦言の会話の夏代の声を吹き替えたもの)など聞かせられれば、もはや簡単に崩壊したかも・・・

>「おおかた、ヒステリーを起こして暴力でもふるったんでしょ」
>血圧計を準備した看護婦が決めつける。

 そうそう、もっと言って、という感じですね。
 「それともパンティの代わりにロープを巻いて欲しくてわざとさわいだのかしら」

 なんていうのはどうでしょうか?

>「こら、上川っ、お前は無知だから仕方がないかもしれんが、反逆者には自分で弁護士を選任する権利は認められておらんのだ。裁判の時に、国選弁護人がつくだけだ。よーく覚えておけ!」

 なーるほど、そういうことだったのか・・・
 
>「悶え苦しんでいるのはお前の乳房でも尻でもない。お前の良心であり、人間としての魂だ。・・・・持てないだろう。
>「──私は、私の人生に悔いなんかない。小さくても無力でも、精一杯、生きてきたから。誰にもそれを奪うことなんか、出来ない。
 私は私の娘の元に絶対に帰る。私の愛する夫の元に絶対に帰る。誰もそれを阻めっ
こない・・・・」

 名台詞の連続ですね。感激。
 確かに「誰もそれを阻めっこない」かもしれません、夏代さん自身を除いては・・・

 「お前がそうやって意地を張っていれば、夫も裁判官の資格を剥奪されて、社会から抹殺されるかもしれんのだぞ、愛する娘とともにぼろぼろになって路傍に迷う上川の姿をそんなに見たいのか、お前は・・・それがお前の愛か?そうじゃないだろう、自分が犠牲になっても、愛する夫と娘を守り抜く、それがお前の愛じゃないのか?」

 なんて答えるでしょうか、夏代さんは・・・

 「このままじゃ、君の奥さんの健康は保障できないよ。君自身は裁判官を止めさせられ、娘さんといっしょに社会から迫害されて生きる覚悟をしたとしても、「奥さんが生きている」のが前提だろう?もう無駄なあがきはやめたらどうだ?君が「離婚」に同意すれば、裁判官としての身分は保証する。君のサポートがないとわかれば、奥さんも無駄な抵抗はやめるだろう。10年のムショ暮らしは避けられないとしても命は助かる訳だ。
 君は自分の意地を張り通して奥さんをさらに窮地に落とすつもりかい?それが君の愛か?」

 なんて答えるでしょうか、上川さんは。

 さらに国選弁護士がどんな人かも気になりますね。
 上川貴文の同期あるいはライバルなんてどうでしょうか?
 ますます眼がはなせません。
 こんなにワクワクするのは本当に久しぶりです。心から期待しております。


  サイケおやじ  2002/12/21 (土) 04:52

「正義派」ありがとうございます。西瓜の場面から一気の盛り上げ、きんこの戒めは当然として、西瓜、毛筆、鏡、ブランデーとそれだけでは普段の物が、出羽健様の世界ではグリグリとしたものに変質していくという……、宴会で疲れて帰ったこちらの心身ともに染み入ってきて言葉を失うほどの素晴らしさでした。彼女はもう駄目でしょう、とこちらに思わせておいて思わぬ背負い投げが出るのか、年明けが楽しみです。


  白川京二  2003/01/10 (金) 23:58

読了しました。もの悲しい結末ですね。
出羽健さんの作品は初期の方は、悲惨な中にもどことなくユーモアがあって、そこが一種の救いとなっていたんですが、最近作は「巨乳持ち」などのコメディ(?)以外は救いがない暗い展開になっています。
もちろんそれぞれ非常に面白く、かつ読ませるのですが白川としては「ブロンド」や「海猫・第一部」のようなからりとした展開のものも読んでみたいなと思います(「乗っ取られ学園」がそのタイプなので、それはそれで良いのですが、新作でもそういったのが読めればなというのが贅沢な欲求ですね。


  山田花子  2003/01/11 (土) 02:25

○出羽健さま
 PCの調子が悪くてやっと最終回が読めました。
 入浴シーン、脳波のこと、12月23日の掲示板で書き込ませていただいた内容もまんざらではないと、ちょっと自信が・・・・
 って全然話の方向が違うか・・・・・
  白川さまのご指摘、真にごもっともと思うのですが、これで
 お話が完全に終わり、というのではない気もするのですが・・・
  (成長した「明日香」がどんな女性になるのか、読んでみたい気がします。)
  最後に夏代を迎えにくる男性を誰にするか、でずいぶん印象が違ったでしょうね。出羽健さまは迷わず斎藤将志を選ばれたのかどうか・・・・
  思想部シリーズ,次回作を楽しみにしております。


  山田花子  03/01/11(土) 03:17

 「正義派の妻」最終回,大変面白く拝見しました。個人的には、白川さまと異なり、もっと暗いお話の展開でも歓迎ですが、そこは出羽さまのバランス感覚がこの作品にまとめたのだと思います。

1)写真のこと
  私は合成写真だと信じますが、そうだと断言せず、違うともいわず、夏代に信じ込ませてしまうテクニックがすごいと思いました。
2)妊娠について
  このまま意地を張り通せば、身体に障害が残るか、あるいは生命も危うかったかもしれない。それを助かったのは、やはり胎仔のおかげでしょうか?皮肉ですね。
もっとも胎仔としては自分が助かるために、その器である母親を助けたのであって、目的はあるまで自分が生き残るためですから、そんなに美談とはいえないかもしれないですね。

 「それにしてもこの段階でよく流れなかったものだ・・・・
 ドクターの感想なのですが、「さすがはレイプ犯の種だな」、というのは後半の
夏代の反省文と対応すると,少し残念な気がします。
 「子宮が飢えていたんだな。おまえの申告が虚偽であることをなによりも雄弁に語っているではないか・・無理矢理ではなく、おまえの方から媚態を示して勧誘したんだろ。そうでなければとっくに流れていたにきまっている」
 なんていうのはいかがでしょうか?
  
 反省文は最高でした。この全否定がたまりません。
「肉体は胎仔のものだ.すでに男子と判明しているその胎仔は・・・」
 という論理も説得力があってすばらしかった。
 続編はあるのでしょうか?

 母親を独占するため、もう2度と子供を生ませない身体にして(帝王切開で)生まれてくるとか・・・・・
 たくましく育った明日香と、生まれてくる男の子との対決なんていうのも面白いかもしれませんね。同じ腹から生まれてきた2人、しかしそれと知らずに憎みあい、あるいは・・・・・なんて
 傑作をほとんどリアルタイムで読めた幸せをかみ締めております。


  のりた  03/01/12(日) 01:00

「正義派の妻」は、さすがに読み応えがありました。
今回で終わりましたですね。これは名作です。
しかし、
『斉藤将志ですよ。あなたがたご夫婦に大変、お世話になりまし
た。−中略−奥さんにもたっぷりと積年の憾みを返せそうだし──』
次の責めが期待できる状態で終わったのが余韻を残していますね。
読者としては、斉藤将志の違う責めを期待したいところです。
続編を出していただけると嬉しいですね。


  サイケおやじ  2003/01/12 (日) 09:22

「正義派」読み終えて、あまりのせつなさに……。こういう結末を知ってしまうと、もう一度最初から読んでみようという気分になれないのが本音です。ただ、こういうディープな雰囲気から抜け出せないのもまた真実で、出羽健様自らが「暗黒度100%」と仰る次回作も楽しみなのですが……。


  つねお 03/03/12 (水)20:03

このまえにメールをさしあげてから、また、ずいぶんと時間がすぎてしまいましたが、はじめて読みおえたときの感動がまだあざやかに息づいているうちに、「正義派の妻」の感想をお伝えさせていただきます。

この作品のすばらしさはほんとうに数えきれないのですが、やはり、そのとてつもない魅力の源泉が、ふるえるほどに魅力的に描かれたヒロインのすがたがのなかにあることはいうまでもありません。
上川 夏代のすがたは、現代において蔓延する人間精神の腐敗をものともせずにのりこえていくかのような、まさに、われわれ男性が女性のなかに求めてやまない美を体現するもののように思えてなりませんでした。
そして、その幸福のただなかで美しく輝く夏代のすがたを思想部の監視カメラがひたすらにとらえつづけるという導入部分の構成は、あたかも行間から滲みでてくるかのように、息ぐるしくなるほどの圧迫感を醸しだし、あまりにみごとなものでした。

もうひとつ、この圧迫感をもたらすことに貢献していたのが、「逃亡者の母」という作品の存在でした。
「逃亡者の母」のなかでは、読者は、ヒロイン芳田 晃子のたどった運命について、それが悲惨なものであったというということのほかには、ほとんどなにも知ることができないのですが、それゆえに、われわれの妄想なかで、晃子の存在はどこまでも拡がっていくことになります。
そして、そのようにして、われわれの想像のなかで増幅された晃子という存在は、彼女の後につづくヒロインたちがたどることになる悲惨を結晶化する象徴のようなものとして、いつのまにか独自のいのちを持つものへと昇華されていくことになります。
上川 夏代が、その輝くばかりの幸福にもかかわらず(もしくは、その輝くばかりの幸福ゆえに)、われわれ読者のなかで、悲運にからめとられた存在として映じざるをえないのは、まさにわれわれの意識のなかに象徴的なものへと昇華された存在として晃子が生きはじめていたからなのかもしれません。
そのように考えると、「思想部」シリーズは、もしかしたら芳田 晃子というヒロインの呪縛のもとに展開していくことにならざるをえないようにも感じられてきますが、しかし、それは、「逃亡者の母」という作品がそれほどまでにすぐれた作品であるということの証であるとするべきでしょう。

ただ、「正義派の妻」という作品を読んで、何よりも確かに感じられるのは、作品が、芳田 晃子を呑みこんでしまったあの残酷な世界を引きつぐだけではなく、そこにさらなる深みをくわえることに成功しているということです。
最終章において明らかにされる、あの完全に破壊されてしまった夏代のすがたが体現する暗黒の深淵は、どれほど想像力をたくましくして晃子のことを思いうかべても、(少なくとも)私には決して想像されえないものでした。
「逃亡者母」のなかで、物語の語りべである「私」は、最後に、「晃子が生きていたら今年で70歳だ。まだきっと美しいに違いない。これだけは妄想ではない。」と述べ、読者にいくばくかの慰めをあたえてくれますが、夏代のこのあまりにも凄惨な末路は、そのような甘い想像をこなごなに打ちくだいてしまうほどに衝撃的なものです。
あらゆる慰めをそぎおとし、ヒロインをからめとる凄惨の実態に迫ろうとするその気迫においては、「正義派の妻」は「逃亡者の母」さえをも超えるほどの傑作であるということができるかもしれません。


  
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