『でわまがガイド』 


「でわまが」への感想

 三氏より了承を戴きましたので公開いたします。(敬称略)

 

 山田花子 04/01


 日ごろ出羽健所蔵庫の更新を心待ちにしている方でも、この外伝マガジンのボリュームには驚かれたのではないでしょうか?
 しかも内容の多彩なこと、会話や悲鳴は最小限に抑えられ、もっぱら的確で重厚な描写が延々と続く・・とてもお茶漬文化の産物とは思えません。ロシアの大平原を鉄道で旅するというのはあるいはこんな感じなのではないかと、乏しい想像力で考えてみましたが、皆様はいかがでしょうか?
強いて欠点を探すと、添えられた3D画像はどれも遊び心があって素敵なのですが、
さすがに白川さまのサイトで拝見する画像つき出羽健作品の魅力をあらためて思い出してしまうのは私だけでしょうか?

 目次でお分かりのように外伝、復刻チャプター、未完作品と大別されておりますが、巻末の創作データによりますと、最初に書かれたのは海猫01で10年以上前、乗っ取られ女学院、疎開華、ホノルルの拷問邸、と続いて、7年以上の間を隔て創作に飛びます。その筆致はしだいに洗練され、描写は簡潔になりますが、文体や文章のリズムはほとんど同じで、類稀なる文章力が早くから完成されていたことがわかります。

 以下、簡単ながら感想を

○復刻海猫01

 これが削られていたなんて信じられません。コンテナの灼熱地獄の中で、野辺地のモノを模した○○を水欲しさのあまりしゃぶる熟女・・
 出羽健作品の中にしばしば登場する癒しの水と、それと対照的な灼熱地獄。自分のモノの模型をまず、愛させる野辺地太洋といったテーマがフルに登場します。
 好き嫌いははっきりするでしょうが、映像だけをこの世に残し、バラバラ死体として捨てられる活動家の最後・・・あまり丁寧に書くと悪趣味ですが、さらっと数行で書かれていている品のよさ。でも、でもああもったいない!!

○乗っ取られ女学院

 ここで復活して拝見したのを実に幸運に思います。
 知らないうちに妻を好きなように洗脳され、その無残な結果と「会う」夫というテーマも繰り返し登場するシーンですが、硝子越しで、なにもできない男の無力感と、どんどん変わっていく女の姿の対比が素晴らしい佳作です。これはぜひ私が外伝を書きたかった・・なんて。

○疎開華

・行水
 少年の一途さと残酷さの描写が秀逸・・リアリティがありますね。

・村長
 都会から田舎に疎開してきたものの悲哀。
 なんの娯楽もない単調な生活に、少しの燭光がみえたと思ったが、それは実は、・・・というところでしょうか?

・真夜中の鉄拳
 最近の作品と比べると洗練されてはいないかもしれないが、エネルギーを感じる描写ですね。

・征服の酒宴
 獲物を見つめる特高刑事の描写に驚きました。いったいどこからこのような細かな観察ができるのか?
 おいつめられていくヒロインの状況を、もうひとりのヒロインの目から描写するという発想はすごく新鮮に感じました。

・乳房を這う蝿の・・・
 抵抗しろとけしかける西山の変態性・・・み、みならわなければ・・・

・女間諜、捕らわれる
 さきほどものべましたが、ヒロインの目からもう一人のヒロインの惨劇をみる、という設定が新鮮。

・蜂の一刺し
 かなり本格的な一刺しですね。ミツバチでなく足長蜂くらいでしょうか?
 反撃が楽しみでもありますが・・・

・連行
 これで終わりとはチト残念・・
 でも全体の流れは、あの名作「逃亡者の母」に似ているかも。

○ホノルルの拷問邸

・悪と華のパーティー
 とても気に入りました。ヒロインの性格が出羽健作品にしてはやや弱いような気がしますが設定はとてもリアルだと思いました。

・ホノルルの妖邸

 白人の手先である中国人にいたぶられる日本人妻・・うーんこれはすごい設定ですね。
 日本人は白人が『妻』(あるいは所有物・愛玩物』と認めてこそ価値があるので、それが失われれば、「劣等人種」としては中国人と同格であります。本来同格であるべき日本人女性が、一人寵を誇り、何の根拠もないのに、自分たちの方が「格が上だ」と思い込むことこそ笑止千万。
 SMヒロインの本質が「転落」であるなら、これはまさに王道であります。
 未完であるのは本当に惜しいです。ぜひ読みたい!!

○プリズナーズ

 ヒロインのどれに思い入れが深いかによって、だいぶポイントが異なるとは思いますが、壮観です。
 やはり牢獄モノ特に海猫が出羽作品の背骨なのだと痛感させられます。これを読んであらためて原作を確認する作業の楽しさといったら・・ううんもう最高!!

・三面鏡・・・ううむ、あの行為の最中にデヴュー映画と対比させられるとは、なんとも残酷ですな。映画女優ならではの責めかもしれませんが・・

・局長巡察・・収容房Y-O2がなんといっても圧倒的でした。最後の最後まで微弱でも抵抗の火を消さないけなげな3人。とっくに状況を承知しながら、あえてその火を消さない野辺地の懐の深さ・・・「永遠」『輪廻』こそSMの極意ですから・・・

・ファイルが別のところに綴じてあって、それを見ながらお話を読んでもいいし、ファイルそれ自身もものすごく内容がある!!これは凄い。ある意味で、このマガジンで一番クラッときた発想です。
 性格、人格、教養などがすべて無視され、ただ肉体の測定値と、雌としての機能、自分たちにとって都合がいいかどうかだけに還元されたペーパー・・彼女らがこの紙に封じ込められているとか・・

 特にファイル00179が最高!!
 収容理由が売春?そして無期懲役?妖淫って何?
 おまけに外科手術がうまくいかなければ極刑とは・・・

 大昔、「なんとなく、クリスタル」という作品があって、注がすごく充実していたのを覚えています。
 さらに、さらに昔、私は「我輩は猫である」偕成社版を読みながら、本文よりも注を楽しく読んだのを思い出しました。

 それにしても髪の長いヴァイオリニストのお話はぜひ、ぜひお願いします。コンクールで優勝したときの演奏をバックに野辺地と一戦するとか・・・

○リ・エディケーション

 率直にいうと、学園モノ、とくにヒロインが高校生のものは今ひとつなのですが、たぶん白川さまのサイトで発表されたときより、スリムでリズム感がよくなっているような気がします。
 途中で枝別れするお話の展開も知的刺激全開!!個人的には冒頭の反抗的ホームページのエピソードがもう少し生かされていたら・・・いつのまにか、HPの趣旨がすっかり変わり、秋季特別補修の『報告』になって、アクセス数が十倍になっていたりする、というラストも(月並みですが)面白いのではないかと思うのですが・・・

○プレゼント

そして私の最も愛する「ブロンド弁護士・・」の外伝である「プレゼント」・・

 白川さまのサイトに連載中から、最初のアングルА、アングルBという斬新な発想に驚かされた私・・。
 娘にまで手をのばす、「禁断」の作品の外伝がどうなるかと思ってドキドキしながら読ませていただいたのですが、さすが才人ある意味では見事な肩すかし・・いえけっして悪い意味ではなく、あまりにもタイミングよく見事にはずされたので、心地いいくらに、遊び心があふれたラストでした。
 黒人の召使いよりさらに下級に位置づけられるクレア・・しかし彼女の優れた知性は『ゲーム』の内容を完全に理解し、いかなる反応も間髪を入れず、ほとんどポーターに付け入る隙を与えません。大丈夫だよ、クレア、君にこの反射神経に富む柔軟な頭脳がある限り、まだまだ君には反撃のチャンスがあるんだから・・
 無駄とは知りつつ思わず声をかけてあげたくなってしまいます。
 膨大なマガジンにざっと眼を通して、私は今至福の時を過ごしています。出羽健マガジンを買おうか買うまいか迷っている方がいれば、私は迷わずつぎのように言いたい・・・

「何を迷っているんだい、ベイビー? 人生の本当の快楽を知るチャンスなんだぜ。ダウンロードした瞬間から素敵な紳士淑女が、お前を桃源郷に運んでくれるにちがいない──今お前の座っている、醜い、退屈で味気ないけれどリアルな世界に戻ってこられるかは保障できないがね」



 つねお 04/03

収録作品である『リ・エデュケーション』の感想をしたためてみました。個人的には、この作品集のなかで、この作品が最も気にいっております。

『リ・エデュケーション』

出羽健書蔵庫が開設されたときに私が最初に読んだ作品は『鉄拳の栄え』でした。この作品のヒロインである吉沢 千夏先生の生徒である阿部 麻衣について、作品は「お姫様のような無垢な美しさ」を備えた人物として短く触れているにすぎませんが、どういうわけか、それからというもの彼女はひどく忘れがたい存在として私のなかで生きはじめることになりました。そのときからこの阿部 麻衣をヒロインとした外伝を読むことができる日をこころ待ちにすることになるわけですが、今、とうとうその希望が叶うことになりました。

作品を読んで、私がまず思ったのは、これまでに抱きつづけてきた期待を満たしてくれるまぎれもない傑作であるということでした。

これは健さんのほとんどの作品についていえることですが、とくに『鉄拳の栄え』という作品においては、実にみごとなかたちでユーモアが用いられています。たとえば、物語の冒頭において、山川宅でくだを巻いている悪漢たち(「悪漢」というにはあまりにも憎めないひとたちですが)のすがたは、読むたびに笑わせてくれます。どれほど齢をかさねても大人になることのできない男という生きものの哀しさを絶妙に味わわせてくれるところです。

しかし、ユーモアの統合ということで、私がさらに感心しているのは、何よりもヒロイン虐待のシーンにおいて用いられるものです。こうしたシーンは、ヘタをすると、ただ残酷なだけのものになりかねないわけですが、それがユーモアにより味つけされることにより、ヒロインのからめとられた状況の不条理性がうきぼりにされることになるのです。この瞬間、物語は、悲劇性と喜劇性を備えたものとして、読者の意識のなかで新たにとらえなおされるわけですが、そのとき、読者は、どこまでも悲惨なはずであるヒロインの姿を笑いながら見つめている自分に気づくことになります。そのような不思議な瞬間を幾度も経験してきたものとして、私は、出羽作品はやはり文学としか形容のしようのないものだと考えています。そして、このような魔術のはたらきをみずからのなかに感じるたびに、健さんという作家のそこしれぬ実力に慄くのです。美しいヒロインにのめりこめばのめりこむほどに、その悲惨を笑わずにはおれない心理というのは、どうにも説明しにくいものですが、しかし、そんな心理を楽しませてくれる出羽文学とは何と特別なものなのでしょう。

『リ・エデュケーション』においても、このような魔術がいかんなく発揮されていますが、特に、関節技に苦悶するヒロインに校歌を歌わせるところは、あまりにも絶妙です。吉沢 千夏がもともとそこはかとない愛敬を湛えたヒロインであったのに対して、阿部 麻衣は、そうしたものよりも、むしろ、凛としたするどさを感じさせるヒロインとして描かれているように思われます。そうしたヒロインによるものであればこそ、こうした滑稽なすがたは、より鮮烈なものとして読者のなかに映じるのだと思います。

『リ・エデュケーション』では、物語はスピーディーに展開しますが、それにより阿部 麻衣というヒロインの清潔な魅力が最後まで新鮮に保たれることになります。確かに、長期の抑圧に耐えつづけたうえでの敗北というのも哀愁を感じさせるものですが、この作品におけるように、瑞々しい生命力に満ちあふれたヒロインがその絶頂において打ちのめさせられるすがたも、また、あわれを感じさせるものです。阿部 麻衣は、そうした若さのはかなさを感じさせてくれるヒロインでした。その意味で、私には、やはりたいへんな魅力を湛えたヒロインです。

『リ・エデュケーション』のもうひとつの魅力は、何といっても怪物・原島 マサミの活躍です。『鉄拳』の中心軸は、あくまでも宮城 靖と吉沢 千夏の確執でしたので、マサミは、その大きな存在感にもかかわらず、どうしても脇に追いやられることになりました。マサミの活躍は、あくまでも靖の「実行部隊」の棟梁としてのそれであったといえるかもしれません(もちろん、それにもかかわらず、あれほどに鮮烈な印象をあたえたのですから、凄いものですが)。しかし、この作品においては、うれしいことに(笑)、その破壊性の鉾先はヒロインに対してずっと内発的なかたちで向けられているように思われます。

あらためて考えるまでもなく、この内発性は、このふたりの少女の立場がとても近いものであるということから発するものだといえます。ふたりとも栄宮学園の生徒であるだけでなく、異なる意味においてではありますが、ともにリーダーとして認識される存在です。立場が等しいものであれば、ふたりの個性の違いはいっそう際立ったものとして意識され、また、それゆえに、その対極の陰極を担わされたものの嫉妬はおのずと激しいものになることでしょう。マサミにとり、阿部 麻衣の美しさは、密かなあこがれの対象であることはいうまでもありませんが、しかし、それゆえに、それはどうにかして破壊されなければならないものとなるのです。彼女にとり、たとえ無意識的にせよ、麻衣のことをあこがれずにはおれない自分の姿は、常に他者のことをあこがれるよう宿命づけられたものとしての自己のあわれな本質を思い起こさせるという意味において、どうにも許しがたいものなのです。そして、そんな葛藤を解決するための方途として彼女が知るのは、麻衣を暴力的に制圧することでしかないわけですが、それにしても、みずからの拠りどころである腕力を存分に発揮して、麻衣を制圧することの快感は果たしてどれほどのものなのでしょうか覧それについては、読者はみずからの嗜虐的な興奮をとおして窺い知ることしかできませんが、すくなくとも、それは、この秋期合宿のあいだだけでもこの醜女になってみたいと思わせるほどに甘美なものであることだけは確かです。

これまでにも、たくさんの出羽作品において、こうした女性間の確執は重要な役割をあたえられていましたが、個人的には、『リ・エデュケーション』におけるものが、その暴力性の表現が最も直截的であるという意味において、『鉄拳』のそれとならんで、最も気にいっています。

このほかのことについてもまだまだ書いてみたい気もしますが、とりあえず、読後の感動が新鮮に息づいているうちに感想をまとめておきたいと思い、この短い文章をしたためてみました。

これからも健さんが、ますます旺盛な執筆活動を展開されることをこころから祈念しながら、ひとまず、このあたりで筆を置くことにします。



 鍛谷 04/06

今回は箇条書きの簡単な感想にさせていただきます。

でわまが全体

・このスタイルはとてもいいと思います。以前より、出羽さんにはもっと「作家としての収入」があるべきだと思っていましたが、なにぶんにもホームページで全作品を公開しつつあるので、今さら止めるわけにも行かないし、また実際わたし自身はありがたく拝読しています。ですから、「でわまが」を有料で頒布はじめたのはちょっと意外でしたが、読んでみて納得しました。「外伝」は今後も書かれることがあるでしょうし、一通りの予定の公開が終われば、「サンプルとしての作品公開」にとどめて、新作や、前作の大半は有料頒布に切り替えてもいいのではと思われます。印刷による出版が行き詰まっている現在、ネットによる販売はあらゆるジャンルで伸びています。頒価は安くても、また時々の売れ行きであっても、絶版ということののない販売方式なのですから。

今回印象が強かったもの

・「プリズナーズ」の囚人身体リストですね。この執拗さが魅力的でした。それにしても内藤基子にはずいぶん肩入れしましたね。わたし好みの伝法ゆかりもかなりいい線でしたので満足ですが、産後間もないとは言え鴇聡子は少しかわいそうかな。美形度などは誰の判定で決めるのか、女陰肛門の等級はどう判定するのか、内情が知りたいところです。海猫幹部の投票でしょうか。「なな」に登場した膣圧計の発展製品のようなものでも使うのでしょうか。

・モニカとクレアの外伝もよかったです。クレアは外伝と言うより始まったばかりのようにも思えますが。

・鈴木みどりの状態もなかなかでした。将来はぜひ鈴木先生が給料をはたいて高級コー
ルガールを買ってもらいたいものです。しかしみどりには花電車や珍芸女郎の方が似合っているかな。

・今回あらためて感じたのは、わたしにとってはやはり「連載もの」よりも単行本や読み切りの方が好みだということでした。

SM小説の見所は、オリジナルな責め方や、絶望状況の描写も魅力ですが、数々の責めによってヒロインの気持ちが「変わる」のも魅力です。モニカやみどりの心境の変化と終着点を見届けたいものです。

 『でわまがガイド』